日本薬理学雑誌
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ミニ総説「感覚系薬理の新展開」
消化管味覚受容の生理機能・薬理作用
畝山 寿之田中 達朗鳥居 邦夫
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2004 年 124 巻 4 号 p. 210-218

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抄録
内臓を支配する迷走神経求心路に伝わる内臓感覚は,消化管内容物の消化状態に関する情報や個々の栄養素(グルコース,アミノ酸等)に関する情報であり,栄養素の生体恒常性維持に欠かすことのできない“意識されない感覚”である.この迷走神経を介する内臓感覚を誘発する栄養素の消化管粘膜上での化学受容機構(gutchemical sensing)の実態に関してはこれまで不明であったが,近年の味覚受容研究の急速な展開から解明の糸口が見えてきた.例えば,舌上での苦味受容を担うT2Rsは消化管においてEC細胞上に発現しており,苦味物質denatoniumの胃内投与により引き起こされる迷走神経求心性活動は,セロトニン産生阻害や受容体拮抗で抑制される.また,通常食を摂取後の迷走神経求心性活動もかなりの部分がセロトニンを介するものであった.今回,栄養素の生体内恒常性維持における迷走神経の役割,消化管内栄養素受容におけるセロトニンの役割について我々の仮説を紹介する.
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© 2004 公益社団法人 日本薬理学会
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