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日本薬理学雑誌
Vol. 124 (2004) No. 6 P 375-382

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http://doi.org/10.1254/fpj.124.375

ミニ総説「小胞体ストレス応答系と神経細胞死制御」

パーキンソン病は,ドパミンニューロンの選択的変性による進行性の運動障害を主症状とする神経変性疾患である.家族性パーキンソン病の一型である常染色体劣性若年性パーキンソニズム(AR-JP)の病因タンパク質であるParkinは,基質タンパク質を特異的に認識し,プロテアソームによる分解を促進する酵素,ユビキチンリガーゼ(E3)である.このためE3の不活性化により,基質タンパク質が異常蓄積してAR-JP発症に至ると考えられる.その仮説に基づいてParkinの基質タンパク質が探索された結果,現在では約10種類の異なる分子がParkinの基質として報告されている.その中で我々が見出したパエル受容体(Pael-R)は黒質ドパミン細胞に高度に発現する,リガンド不明のGタンパク質共役型受容体である.Pael-Rは折れたたみ(フォールディング)が困難なタンパク質で,新生タンパク質の約50%がフォールディングに失敗し,構造が異常で機能をもたないミスフォールドタンパク質になる.ParkinはE3として構成的にミスフォールド化Pael-Rをユビキチン化し,その分解を促進している.AR-JPではParkinが不活性化されるために分解されなくなったミスフォールド化Pael-Rが小胞体に蓄積し,小胞体ストレスによって細胞死を引き起こすと考えられる.Pael-Rは培養細胞でアポトーシスを起こすだけでなく,ショウジョウバエのニューロンで過剰発現させてもドパミンニューロン選択的細胞死を引き起こすことが示された.一方Parkinノックアウトマウスではドパミンニューロン死は起こらず,既知の基質の蓄積もみられないことから,病因となる基質の特定は困難な状況である.Pael-R蓄積による小胞体ストレスがAR-JPの神経変性をどこまで説明できるのか,最新のデータに基づいて議論する.

Copyright © 2004 公益社団法人 日本薬理学会

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