日本薬理学雑誌
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総説
腎臓におけるβ2アドレナリン交感神経受容体の役割
中村 明夫今泉 晃柳川 幸重
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2004 年 124 巻 6 号 p. 427-434

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抄録

β2アドレナリン交感神経受容体(β2-AR)刺激薬の大部分は未変化のまま腎臓より排泄されるため,ネフロンを通過する過程でなんらかの薬理学的効果を発揮すると思われる.しかしながら,β2-ARの腎機能調節における役割が明らかにされていないため,実際の使用時には,このような薬理効果は考慮されていない.腎臓のβ2-ARは主に近位尿細管上皮細胞と,腎動脈の平滑筋細胞膜に分布している.これらの発現の部位を考えれば,β2-ARは糸球体機能や,ネフロンでのナトリウムと水分バランスに作用していると思われる.実際,β2-AR刺激薬を投与すると腎糸球体濾過率は著しく低下する.一方,β2-AR刺激薬は腎臓での炎症性サイトカイン,例えばTNF-αの産生を阻害する.さらに,β2-AR刺激薬は溶血性尿毒症症候群(HUS)の志賀毒素によるアポトーシスの誘導を抑制することがわかっている.腎臓のβ2-AR機能に関して薬理学的根拠に基づいた理解を進めることは,呼吸器疾患で投与されるβ2-AR刺激薬の腎機能を考慮した適正使用についてや,敗血症とHUSに伴う腎臓の炎症や障害に対する治療について重要かつ新しい情報を提供することになる.

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© 2004 公益社団法人 日本薬理学会
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