日本薬理学雑誌
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ミニ総説:情動のメカニズム研究の最近の進歩 ―動物からヒトへの外挿
遺伝子改変動物における情動性の評価
永井 拓山田 清文鍋島 俊隆
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2005 年 125 巻 2 号 p. 71-76

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抄録

不安障害は全般性不安障害,パニック障害,強迫性障害,心的外傷後ストレス障害などに分類されており,それぞれの不安障害に対して有効な薬物の種類が異なっていることも知られている.したがって,不安障害における情動変化のメカニズムの解明や治療薬を開発する上で,分類された各々の不安障害に対応した動物モデルの作製が必要である.しかし,ヒトの不安や恐怖などの情動変化を動物レベルで測定することは容易ではない.神経精神薬理学的な研究において,動物に不安や恐怖状況を設定し,これらにより生じる行動変化や行動変化に対する薬物の反応性を客観的かつ定量的に評価することにより,病態を反映した妥当性の高い動物モデルの作製が試みられてきた.一方,最近の分子生物学の進歩に伴い,様々なノックアウトおよびトランスジェニックマウスが作製され,これらの遺伝子改変動物を用いて遺伝子レベルで情動性の分子機構を解明しようとする研究が盛んに行われている.本稿では,情動性の代表的な評価試験方法および不安との関連が示唆されている遺伝子改変動物について概説する.

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© 2005 公益社団法人 日本薬理学会
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