日本薬理学雑誌
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ミニ総説:情動のメカニズム研究の最近の進歩 ―動物からヒトへの外挿
ヒトの脳損傷研究から見た情動のメカニズム
藤井 俊勝平山 和美深津 玲子大竹 浩也大塚 祐司山鳥 重
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2005 年 125 巻 2 号 p. 83-87

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抄録

情動は個体の身体内部変化(自律神経活動,内臓活動など)と行動変化を含めた外部へ表出される運動の総体であり,感情は個体の心理的経験の一部である.ヒトの脳損傷後には,個々の道具的認知障害や行為障害を伴わずに,行動レベルでの劇的な変化がみられることがある.本稿では脳損傷後に特異な行動変化を呈した3症例を提示し,これらの症状を情動あるいは感情の障害として捉えた.最初の症例は両側視床・視床下部の脳梗塞後に言動の幼児化を呈した.次の症例は両側前頭葉眼窩部内側の損傷により人格変化を呈した.最後の症例は左被殻出血後に強迫性症状の改善を認めた.これら3症例の行動変化の機序として,情動に関連すると考えられる扁桃体-視床背内側核-前頭葉眼窩皮質-側頭極-扁桃体という基底外側回路,さらに視床下部,大脳基底核との神経回路の異常について考察した.

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© 2005 公益社団法人 日本薬理学会
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