日本薬理学雑誌
Online ISSN : 1347-8397
Print ISSN : 0015-5691
ISSN-L : 0015-5691
特集:薬理学における代替動物実験の展開
動物実験代替法におけるES細胞利用の新しい展開
今井 弘一中村 正明
著者情報
ジャーナル フリー

2005 年 125 巻 6 号 p. 335-342

詳細
抄録

Embryonic stem cellsの分化障害を指標としたin vitro発生毒性試験法であるEmbryonic Stem CellTest(以下,EST法)は,従来の動物実験を中心とする方法に比較した場合,短時間で原因物質の特定やその解析が容易であり,ヒトの発生毒性データとの高い相関性や再現性についても認められている.この方法を用いて,歯科領域でう蝕を修復するために用いる複合材料であるコンポジットレジン用モノマー4種類がES細胞に及ぼす影響を調べ,すべて“weak embryotoxic”の結果を得た.さらに,生体組織内における難溶性の歯科生体材料の影響を評価する目的で,3次元培養法を応用してEBsをコラーゲンゲル内へ封埋する変法を考案した.硬化した2種類のコンポジットレジンを直接に作用させてES細胞の分化率と細胞生存率の関係を調べた結果,溶媒を使用せずにES細胞に暴露させてその発生毒性レベルを評価できることが明らかとなった.以上の2つの実験結果を受けて,動物実験代替法,とくに医療機器の生物学的安全性試験について,歯科生体材料を基本に医療機器の生物学的安全性を調査する上でES細胞を利用する取り組みについて種々に考察し,その有用性と課題について論じた.

著者関連情報
© 2005 公益社団法人 日本薬理学会
前の記事 次の記事
feedback
Top