日本薬理学雑誌
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特集:薬理学における代替動物実験の展開
動物実験代替法を用いた薬効評価
―ニワトリ胚の動物実験代替法への応用―
吉山 友二宮崎 博之杉山 隆
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2005 年 125 巻 6 号 p. 358-364

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抄録

本研究では,古くから薬物の毒性および薬効の評価に使用されてきたニワトリ胚の動物実験代替法への応用を目的とし,毒性学的・薬理学的評価法の確立を試みた.まず,毒性学的評価法として心血管系作用薬の致死毒性について検討した.孵卵2日目の受精卵への気室内投与における心血管系作用薬のLD50値は,げっ歯類における致死毒性の予測性が高く,概略の致死量の算出を求められている非臨床試験の単回投与毒性試験の動物実験代替法としてきわめて有用であると考えられる.次いで,生理学的および薬理学的評価法の検討を目的とし,心電図波形記録法の開発を行った.孵卵後期の胚は体動が著しいため,urethane-α-chloralose混液による胚の静穏化を試みた.また,心臓の起電力が小さいため,高感度心電図波形記録システムを作製した.その結果,孵卵16日目のニワトリ胚において明瞭かつ分析可能な心電図波形の記録を可能とした.本法を用いて,種々の心血管系作用薬の心電図波形に及ぼす影響について検討した結果,ニワトリ胚は心血管系作用薬の毒性および薬効評価において有用な動物実験代替種であることが示唆された.また,Caチャネル拮抗薬投与後の心電図波形に対する照明条件の影響について検討した結果,明条件下と比較して暗条件の方が心電図波形に及ぼす影響が強く発現し,この増強効果はメラトニンの同時投与により再現された.ニワトリ胚はメラトニンの関与するサーカディアンリズムに関する時間薬理学的研究,あるいは薬物相互作用の研究分野においても有用であると結論した.さらに,ヒトでみられる抗不整脈薬の催不整脈作用がニワトリ胚で再現可能であったことから,この種の薬物の有害作用のスクリーニングにも有用であると結論した.ニワトリ胚を用いる毒性·薬効評価法は,非常に有用性の高い動物実験代替法であると結論した.

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