日本薬理学雑誌
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総説
免疫抑制薬タクロリムスの薬物動態に及ぼす薬物代謝酵素およびトランスポータの遺伝子多型の影響
丹羽 俊朗白神 歳文大村 稔近藤 利彦黒田 昌利高木 明
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2006 年 128 巻 6 号 p. 395-404

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抄録

カルシニューリン阻害薬であるタクロリムスは主にチトクロムP450 3A4(CYP3A4)およびCYP3A5で代謝され,multidrug resistance protein 1(MDR1)の基質になる.また,CYP3A4,CYP3A5およびMDR1には遺伝子多型が存在することが知られている.そこで,これらの薬物代謝酵素およびトランスポータの主要な遺伝子多型を紹介し,タクロリムスの薬物動態に及ぼす影響を整理した.CYP3A4*1の変異であるCYP3A4*1BCYP3A5*1の変異であるCYP3A5*3,MDR1のexon 21の2677G>T/Aおよびexon 26の3435C>Tの変異等の発現には人種差が存在する.CYP3A5*1/*1またはCYP3A5*1/*3を有する患者の投与量換算したタクロリムスのトラフ濃度(C/D)および血中濃度―時間曲線下面積(AUC/D)は,CYP3A5*3/*3を有した患者(CYP3A5を発現していない)に比べて減少する.MDR1では遺伝子多型の影響が認められたという報告と認められなかったという報告が混在している.タクロリムスの薬物動態には肝臓と消化管の両方に存在しているCYP3A4,CYP3A5およびMDR1の遺伝子多型が複雑に絡み合って影響しているものと推察され,最近での報告例のように,他の遺伝子多型等の諸因子を統一した条件で,目的とする遺伝子多型の影響を詳細に評価する必要があるように思われる.

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© 2006 公益社団法人 日本薬理学会
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