日本薬理学雑誌
Online ISSN : 1347-8397
Print ISSN : 0015-5691
ISSN-L : 0015-5691
創薬シリーズ(2)リード化合物の探索
HTSからリード化合物はでるのか?
三井 郁雄
著者情報
キーワード: HTS, リード化合物, Hit-to-Lead
ジャーナル フリー

2007 年 129 巻 4 号 p. 281-285

詳細
抄録

「HTSからリード化合物はでるのか?」の問いに対しては「Yes」である.そして,この「Yes」は単にリード化合物を獲得できるという意味ではなく,世界中の競争相手に勝つという意味が付加されなければならない.勝たなければリード化合物を獲得しても意味がない.HTSに関して日本の製薬企業と欧米の製薬企業を比較すると,規模的な面,すなわち標的数や化合物数などで日本企業は劣っている.従って,日本企業が競争に勝つためには,日本人が比較的得意とするチームスピリットの発揮,規模に依存しない考える力,すなわち個人の判断力を最大限に生かせる評価系構築力や結果評価能力などで優位性を確保する必要がある.勿論,これを実現することは容易ではないが,工夫することにより実現可能になると考えている.そして,世界との競争に勝つ確率を高めるためには日本企業間の協力など,新たな方策を考える必要があることも確かである.  HTSは世界中の製薬企業で実施されており,既に特殊な技術ではなく,広く使用されているリード化合物(注1)を見出すための一つのスクリーニング手法である.このHTSでは,日本の製薬企業(日本企業)と欧米の製薬企業(欧米企業)の間に,設備・マンパワーなどに大きな差が存在し,規模的な面で日本企業が劣っている.ここでは日本企業における「HTSからリード化合物はでるのか?」に限定して,私の考えを書かせて頂く. 注1)リード化合物 薬を宝石とすれば,リード化合物は宝石の原石のようなものであり,日本製薬工業協会(http://www.jpma.or.jp/)ではリード化合物を「薬理活性のプロファイルが明らかであり,これを化学的に修飾することで活性の向上,毒性の減弱が期待できる新規化合物」と説明している.

著者関連情報
© 2007 公益社団法人 日本薬理学会
前の記事 次の記事
feedback
Top