日本薬理学雑誌
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特集:睡眠障害と睡眠覚醒調節
睡眠の分子生物学
上野 太郎粂 和彦
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2007 年 129 巻 6 号 p. 408-412

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抄録

睡眠は動物界において広く観察される生理現象であり,睡眠覚醒制御は概日周期の出力系として最も重要なものの一つである.従来,睡眠が体内時計に制御されていること,および体内時計の遺伝子は哺乳類と昆虫間で保存されていることが示されていた.ショウジョウバエは1日のうち,約70%の時間をじっと動かない状態で過ごす.また,この静止状態は行動学上,哺乳類の睡眠に特徴的な様々な側面を併せもつことより,ショウジョウバエに睡眠類似行動が存在するということが示されている.ショウジョウバエはその生物学的特徴により,遺伝学的解析に広く用いられており,ショウジョウバエにおける睡眠類似行動の発見は,睡眠の分子生物学を推進する要因となった.ショウジョウバエを用いた睡眠の遺伝学的解析により,睡眠時間を規定する遺伝子が同定され,また睡眠を調節する脳内構造についても研究が進んでいる.本稿では,ショウジョウバエを用いた睡眠の分子生物学的研究について概観する.

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