日本薬理学雑誌
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特集:行動薬理学入門
学習・記憶行動の評価法
田熊 一敞永井 拓山田 清文
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2007 年 130 巻 2 号 p. 112-116

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抄録

学習・記憶は,ヒトの知的活動の中心をなすものであり,得られた情報を脳に蓄積し,その情報に基づいて新たな問題に対する推論と意志決定が行われている.学習・記憶が円滑に進むためには,入力・情報処理・出力に区別されるプロセスが適切に機能する必要があり,いずれのプロセスにおける機能不全によっても日常生活は困難なものとなることが予想される.一方,昨今の我が国における急激な高齢化は,認知症を代表とする学習・記憶障害を伴う疾患の増加をもたらし,また,社会環境の多様化や複雑さは,小児の発達障害や薬物乱用など学習・記憶障害と直面する様々な問題を招くものと考えられる.したがって,学習・記憶行動の評価系は,今後の記憶障害に関連した疾患の病態解明ならびに治療薬開発において不可欠な必須アイテムである.一般に,動物実験のヒトへの外挿においてしばしば問題点が見られるが,学習・記憶については,下等動物から高等動物に至るまで類似した機構が数多く存在することより,小動物を用いた学習・記憶に関する実験成果の利用価値は極めては高いと考えられている.そこで本稿では,小動物(マウスおよびラット)を用いた学習・記憶行動の評価系のゴールデンスタンダードとして汎用されている(1)Y字型迷路試験,(2)ロータロッド試験,(3)恐怖条件付け文脈学習試験,(4)水探索試験,(5)新奇物質探索試験,(6)受動回避試験,(7)放射状迷路試験,(8)Morris水迷路試験および(9)遅延見本合わせ・非見本合わせ試験の原理と具体的方法について概説する.

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© 2007 公益社団法人 日本薬理学会
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