日本薬理学雑誌
Online ISSN : 1347-8397
Print ISSN : 0015-5691
ISSN-L : 0015-5691
特集:神経伝達物質トランスポーター研究の新しい展開
グリシントランスポーターによる神経因性疼痛の制御
森田 克也本山 直世北山 友也森岡 徳光土肥 敏博
著者情報
ジャーナル フリー

2007 年 130 巻 6 号 p. 458-463

詳細
抄録

神経因性疼痛は難治性で従来の鎮痛薬が奏効せず,新しい薬が期待されている.グリシン作動性ニューロンは脊髄を含む脳の特定部位に局在し,痛みシグナルの伝達を調節する重要な役割を果たしている.本研究では,坐骨神経部分結紮(PSL)神経因性疼痛モデルマウスを用いてグリシントランスポーター(GlyT)阻害薬の抗侵害作用について検討し,特異的GlyT1阻害薬ORG25935,sarcosineおよびGlyT2阻害薬ORG25543,ALX1393の脊髄腔内投与および静脈内投与によりアロディニア症状を寛解することを見い出した.この作用は強力で長期間持続し,gabapentinの作用よりも著しく長いものであった.GlyTs阻害薬の抗アロディニア作用はGlyTsの阻害によるグリシンの貯留と,それに続く脊髄グリシン受容体α3(GlyRα3)の活性化を介したグリシン作動性抑制系の賦活によることを示した.グリシン神経の活性化は神経損傷の初期では侵害的に作用し,4日以降に抗侵害作用を認めた.この逆転現象はミクログリアの活性化,脳由来神経栄養因子(BDNF),細胞内Cl-の汲み出しに機能するKCC2の発現抑制といった一連のカスケードが関与する可能性を示唆した.以上,GlyTs阻害薬に強力な抗アロディニア作用を認め,GlyTは神経因性疼痛の治療薬開発のターゲットとなることを示した.更に,GlyTs阻害薬の作用は,神経損傷後3~4日を境に逆転した.このことよりGlyT阻害薬は投与のタイミングが重要であることを明らかにした.また,この逆転現象は神経因性疼痛発症の基盤となる分子メカニズムを解明する面からも興味がもたれる.

著者関連情報
© 2007 公益社団法人 日本薬理学会
前の記事 次の記事
feedback
Top