抄録
われわれはストレス適応の神経生理学的基盤を明らかにするために,脳機能画像解析法を用いた検討を行っている.本稿ではその研究成果を中心に報告する.健常人を対象としたfMRIおよびMEGを用いた検討から,ストレス事象は脳内において認知されること,急性のストレスにより脳内機構の一部に変化が生じること,予測がストレス事象の入力を抑制する可能性などが考えられた.さらに,これらの機能において前頭前野を含む脳内ネットワークが重要な役割を果たしていることが推定された.また,うつ病患者を対象とした研究からは,これらの脳内機構が障害を来していることが推測され,今後,これらの研究結果をふまえて,ストレスへの適応を強化するための方策を検討していくことが重要と考えられた.