日本薬理学雑誌
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新薬紹介総説
新規腸管洗浄剤ビジクリア(ビジクリア®錠)
篠崎 豊
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2008 年 131 巻 4 号 p. 301-304

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抄録

ビジクリアは,米国において2001年より販売されているVisicol錠(Salix Pharmaceuticals, Inc.)を,日本人に適した製剤および用法・用量に検討,開発した経口腸管洗浄剤である.ビジクリアは,リン酸二水素ナトリウム一水和物および無水リン酸水素二ナトリウムを有効成分として配合しており,大腸内視鏡検査の前処置薬として優れた腸管洗浄効果を示す.また,ビジクリアは日本で初めての錠剤タイプの経口腸管洗浄剤であり,患者受容性(服薬のしやすさ)の向上を目的として開発された.ラットおよびイヌでの薬効薬理試験の結果から,ビジクリアの作用機序は,腸管内に水分を貯留させて瀉下作用を示し,その結果腸管洗浄効果を発揮すると考えられている.ビジクリアの用量・用法はVisicol錠でのそれを基に検討し,その洗浄効果,副作用発現率,受容性の結果および本邦における使用上の利便性を考慮し,「大腸内視鏡検査の4~6時間前から1回あたり5錠ずつ,約200 mLの水とともに15分毎に計10回(計50錠)経口投与する」とした.ビジクリアを用法・用量に従い服薬した時の大腸洗浄効果の有効率は,93.1%(311/334例)であり,既存の経口腸管洗浄剤の有効率と比較して劣るものではなかった.また,承認時までの安全性評価対象例中49.2%(268/545例)に副作用が認められ,その内訳は自他覚的副作用の発現率11.4%(62/545例),臨床検査値異常の発現率43.7%(238/545例)であった.この臨床検査値異常において認められる血清中電解質の変動(血清カリウム低下,血清リン低下等)は一過性のものであり,ほとんどの被験者で服薬開始3~7日後には服薬前に回復した.受容性は4段階で評価し,「受入れやすい」または「まあまあ受入れやすい」と回答した割合は,80.3%(192/239例)であり,大腸内視鏡検査の経験がある被験者において,77.1%(27/35例)が「過去の腸管洗浄法がつらかった」と回答した.一方,ビジクリア服薬後のほとんどの被験者の大腸内にビジクリア由来の不溶成分(結晶セルロース)が認められたが,容易に吸引除去が可能であった.以上の結果から,ビジクリアは大腸内視鏡検査の前処置において有用な経口腸管洗浄剤であると考えられた.

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© 2008 公益社団法人 日本薬理学会
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