日本薬理学雑誌
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実験技術
ニューロメーターを用いた新しい知覚線維選択的侵害受容評価法
植田 弘師松本 みさき
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2008 年 131 巻 5 号 p. 367-371

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抄録
実験動物における疼痛閾値は,これまで機械的,熱的,化学的刺激法による侵害性行動の評価が用いられてきた(本誌130巻1号2007年7月39-44頁,実験技術:疼痛試験法の実際).一般に,機械性刺激は有髄A線維を,熱性刺激は無髄C線維を感作すると概括されているが,各線維間の混合刺激となるのが常であり,知覚線維に対する選択性に課題があった.慢性の痛みには異なる分子機構により生ずることが予想されることから,線維特異的な応答評価,分子機構解明を行うことは創薬の観点から重要な課題である.著者等は,マウスにおいて様々な生理活性化学物質による侵害性応答を比較し,責任線維の解析を行ってきた(末梢性疼痛試験法Algogenic stimulation-induced paw flexion test:APF試験法).近年のめざましい研究の発展から,神経因性疼痛などの病態時には生理的に非侵害性であるとされた有髄Aβ線維の活動も疼痛伝達に関与することが明らかにされてきた.そこで,著者等はこの目的のために,化学物質によらない侵害刺激法として,ニューロメーター電気刺激装置を導入し,EPF(Electrical stimulation-induced Paw Flexion)試験法,ならびにEPW(Electrical stimulation-induced Paw Withdrawal)試験法を確立した.これは,3つの異なる電気刺激により,無髄C線維応答,有髄Aδ線維応答,有髄Aβ線維応答をそれぞれに評価することのできる方法である.ニューロメーター装置は,既に臨床において数年にわたる実績があり,著者等はこれをマウスに応用し,高感度且つ安定的に閾値を決定づけることに成功した.実際に,得られた各種線維応答の薬理学的特性は,これまでに見出されてきた特性とも一致する.本稿では,ニューロメーターを用いた行動解析法の実験技術と,これにより得られる線維応答の薬理学的特性について併せて紹介する.
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© 2008 公益社団法人 日本薬理学会
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