抄録
現在,医学教育の中で,「和漢薬を概説できる」がコア・カリキュラムになり,多くの大学で東洋医学のカリキュラムが取り込まれている.これまで,東洋医学は古典的,伝統的な医学概念として理解され,先人による永年の臨床経験に基づいて処方され,その作用機序は不明であるといわれてきた.現在,依然不明な点も多いが,これまで多くの基礎医学的実験によるエビデンスから薬理作用メカニズムが詳細に解明されてきている.難解とされる東洋漢方的概念は「証」であろう.漢方医薬は3000年の臨床経験から「証」に準じた2種以上の生薬からなる複合多成分薬であるので,「証」を全く無視しての診断処方は難しい.西洋医学との相違や基本的理論(「気血水」「八綱弁証」「六病位」「五臓」)など,漢方医学的特徴をある程度理解する必要がある.これまで解明されてきた多くの基礎・臨床薬理学エビデンスから,卒後医師や学生の東洋漢方医学に対する興味や認識度を向上させ,正しい知識と理解に結びつけていきたい.将来,漢方医薬が誰でも処方できる医薬品となるように,漢方医学の概論を簡略にまとめた.