日本薬理学雑誌
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新薬紹介総説
アプタマーの医薬品への応用:加齢黄斑変性治療薬ペガプタニブナトリウム(マクジェン®)の薬理学的特徴と臨床成績
永岡 真田原 誠江坂 悦子大石 昌代中根 正己
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2009 年 134 巻 2 号 p. 87-95

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抄録
ペガプタニブナトリウムは,血管内皮増殖因子(Vascular Endothelial Growth Factor:VEGF)阻害薬である.その活性本体はアプタマーと呼ばれる核酸分子であり,アプタマー部分がVEGFに結合することでVEGFのVEGF受容体への結合を阻害する.VEGFは血管新生および血管透過性亢進に関与しており,加齢黄斑変性(Age-related Macular Degeneration:AMD)のうち,脈絡膜新生血管(Choroidal Neovascularization:CNV)を本態とする滲出型AMDにおいて,CNV形成と関連していることが報告されている.その中でもVEGF165は炎症誘発性が高く,眼内における病的血管新生に関与していると考えられている.ペガプタニブナトリウムは,in vitro試験においてVEGF165の受容体への結合とそれに伴う受容体機能を選択的に阻害し,動物モデルにおいて血管新生および血管漏出を抑制した.国内外の臨床試験の結果,0.3 mgから3 mgのペガプタニブナトリウムの投与により視力低下抑制作用が確認され,臨床推奨用量は最小用量である0.3 mgとなった.主な副作用は角膜浮腫,前房の炎症,飛蚊症,硝子体混濁であったが,国内外とも発現率は同程度であり,用量による明らかな増加はみられなかった.硝子体注射に伴う有害事象の頻度は高かったが,その多くは軽度または中等度であり,忍容性は良好であった.薬物動態の検討の結果,1 mgでも初回投与の結果から予想された蓄積係数の1.06倍を超える累積は確認されなかった.以上の特徴から,ペガプタニブナトリウムは滲出型AMDに対する新規作用機序を有する治療薬として期待される.
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© 2009 公益社団法人 日本薬理学会
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