日本薬理学雑誌
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新薬紹介総説
カンデサルタン シレキセチル/ヒドロクロロチアジド配合剤(エカード®配合錠)の薬理作用および臨床効果
楠本 啓司森 光宏田之頭 淳一戸塚 伸夫
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2009 年 134 巻 4 号 p. 217-224

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抄録
エカード®配合錠はアンジオテンシンII(AII)タイプ1受容体拮抗薬(ARB)であるカンデサルタン シレキセチル(ブロプレス®錠,以下C.C.)4 mgまたは8 mgとチアジド系利尿薬であるヒドロクロロチアジド(HCTZ)6.25 mgとの配合剤である.両剤とも臨床において広く使用されている薬剤であるが,HCTZはレニンアンジオテンシン(RA)系の賦活化による血漿レニン活性上昇の結果,長期間使用すると降圧効果が減弱することがあるといわれている.したがって,RA系を抑制するC.C.とRA系を活性化するHCTZとの併用は,C.C.本来の降圧効果に加えてHCTZのRA系活性作用による降圧効果の減弱を補い,相乗的な降圧効果をもたらすことが期待される.高血圧自然発症ラット(SHR)を用いてC.C.とHCTZとの併用が降圧作用に与える影響について検討した結果,C.C.は反復経口投与により単独で降圧作用を示し,HCTZとの併用により降圧効果が増強するという成績が得られた.一方,HCTZの反復経口投与において示される利尿効果に対してC.C.はほとんど影響を与えなかった.したがって,利尿作用の発現に伴いRA系を賦活化するHCTZとRA系を抑制するC.C.の併用は,降圧作用の増強の点において合理的なアプローチであることが明らかとなった.臨床第III相試験において,エカード®配合錠によるトラフ時坐位拡張期血圧下降量はC.C.単独群およびHCTZ単独群に比べて有意に大きく,エカード®配合錠の有用性が立証された.また,エカード®配合錠を反復投与した場合の薬物動態に変化はなく,安定した降圧効果が得られると考えられた.さらに,エカード®配合錠の長期(52週間)投与試験において,単剤で報告されている以外の新たな副作用や遅発性の副作用も認められなかった.以上より,エカード®配合錠はC.C.単剤で効果不十分な患者の新たな治療選択肢として,個々の患者の状態に合わせた降圧治療に寄与できるものと考えられる.
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© 2009 公益社団法人 日本薬理学会
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