日本心臓血管外科学会雑誌
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[先天性疾患]
奇静脈を用い,二期的に右肺動脈再建を行った孤立性右肺動脈近位部欠損の1例
川人 智久江川 善康細谷 祐太下江 安司吉田 誉
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2019 年 48 巻 1 号 p. 35-38

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抄録

呼吸器症状を契機に発見された2歳10カ月の右肺動脈近位部欠損の女児に対し,右肺動脈末梢の成長を促すため自己の奇静脈をfree graftとして用いたBlalock-Taussig変法を行ったところ,右肺動脈末梢の成長が得られ,さらにgraftとして用いた奇静脈も十分な太さに拡張していた.3歳8カ月時に右肺動脈再建手術を行ったが,術中所見から拡張した奇静脈の強度も十分と判断されたため,末梢側吻合はそのままとして奇静脈graftの中枢側を主肺動脈に吻合した.術後経過は良好で,呼吸器症状も消失した.本例のように肺動脈再建にあたってなんらかの補填物を要する場合,成長も期待できるgraft materialとして,長期予後不明であるものの,奇静脈が有用な選択肢の1つになりうると考えられた.

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