日本薬理学雑誌
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総説
一酸化窒素を介する脳血流調節とアルツハイマー病:最近の知見
戸田 昇安屋敷 和秀
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2010 年 135 巻 1 号 p. 20-24

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抄録
神経源性と考えられてきたアルツハイマー病(AD)を初めとする認知・記憶障害にも,脳循環低下による慢性的な酸素供給の減少と代謝障害が関与することを示す報告が少なからず見られる.その中で,脳血管内皮障害の占める役割に多くの注目が寄せられている.内皮障害には血管性危険因子(vascular risk factor)や加齢が強い関わりをもつ.内皮機能の主要なマーカーとしての一酸化窒素(NO)とADとの関係について最近興味ある情報が数多く見られる.β-amyloid(Aβ)沈着と脳微小血管内皮障害との間に強い相関が観察されている.NOの減少はAβ沈着を助長し,AβはNOの働きや合成を抑制して脳血流を減少する.NO合成酵素(NOS)阻害薬はAβの有害作用を増幅する.AD治療薬であるコリンエステラーゼ阻害薬の血管作用にNOが関係する可能性が示唆されている.脳における炎症反応はiNOSを介してNOの過剰産生をもたらし神経変性や神経死をひき起す.新しい視点からのAD研究が,ADの予防と治療の発展に貢献することを願っている.
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© 2010 公益社団法人 日本薬理学会
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