日本薬理学雑誌
Online ISSN : 1347-8397
Print ISSN : 0015-5691
ISSN-L : 0015-5691
特集 眼薬理学の最近の進歩
緑内障薬物治療薬の現状と未来
相原 一
著者情報
ジャーナル フリー

2010 年 135 巻 4 号 p. 129-133

詳細
抄録
緑内障は特徴的な視神経乳頭障害とそれに伴う視野障害を有する慢性進行性視神経症であり,緑内障性視神経症と捉えられ,その原因は多因子性である.その中で眼圧が最大の危険因子であり,また唯一の治療方法が眼圧下降治療である.眼圧下降治療薬は大きく,房水産生抑制と房水流出促進をターゲットとする薬剤に分かれている.房水産生抑制薬は交感神経β遮断薬,α2刺激薬,および非選択性交感神経刺激薬,また,炭酸脱水酵素阻害薬が存在する.房水流出促進薬としては主としてプロスタグランジン(PG)関連薬があり,その他にはα1遮断薬,副交感神経刺激薬が存在する.PG関連薬は世界的に5種類存在するがそのうちプロスト系と呼ばれる4種類が強力な眼圧下降効果を持ち,1日1回点眼であること,副作用が局所であること,β遮断薬と異なり昼夜の日内変動に関係なく一定の眼圧下降効果を有すること,高いアドヒアランスが期待できることから,第一選択薬となっている.また,点眼薬という特殊な剤型と眼表面からの特殊な眼内薬物移行,ならびに特に緑内障に特徴的な長期にわたる点眼治療を必要とする点から,緑内障治療薬は主剤の特徴のみならず,製剤そのもの,また基剤の防腐剤などの添加剤の眼表面への影響に留意して開発,処方が行われている.また今後上市予定の合剤,将来的には眼圧下降以外の緑内障治療手段として注目されている神経保護薬の開発も待たれる.
著者関連情報
© 2010 公益社団法人 日本薬理学会
次の記事
feedback
Top