多くのGタンパク質共役型受容体と異なり,ヒスタミンH
1受容体刺激はH
1受容体遺伝子発現の亢進を介して,同種の受容体アップレギュレーションを引き起こした.この分子機構にはタンパク質キナーゼC-
δの活性化シグナルが関与する.また,IL-4受容体刺激により,H
1受容体遺伝子発現亢進を介する異種のアップレギュレーション機構も存在する.この分子機構にはJak3,Stat6を介するシグナルが関与する.アレルギー性鼻炎モデルラットの鼻粘膜において,鼻炎発作に伴いヒスタミンH
1受容体遺伝子の発現亢進を介するH
1受容体アップレギュレーションが引き起こされた.このH
1受容体アップレギュレーションにはH
1受容体を介する同種のH
1受容体遺伝子発現亢進機構とH
1受容体を介さない異種のH
1受容体遺伝子発現亢進機構が関与する.異種のH
1受容体遺伝子発現亢進機構もH
1受容体シグナルが関与するが,1週間以上の長時間のH
1受容体シグナルを必要とした.異種のH
1受容体遺伝子発現亢進シグナルはIL-4により仲介されることが示唆され,アレルギー性鼻炎の症状悪化に関係することが考えられる.アレルギー性鼻炎モデルラットの症状は抗ヒスタミン薬の投与量よりヒスタミンH
1受容体遺伝子発現レベルに依存することから,H
1受容体遺伝子はアレルギー疾患感受性遺伝子であることが明らかである.タンパク質キナーゼC-
δ活性化シグナルを介するヒスタミンH
1受容体遺伝子発現亢進は抗アレルギー作用が伝承される緑茶,および,苦参などの天然物医薬により強力に抑制され,これらの天然物医薬はアレルギー性鼻炎モデルラットの症状を強力に抑制した.タンパク質キナーゼC-
δシグナルを抑制する天然物医薬は抗ヒスタミン薬と薬理機構が異なり,新規アレルギー疾患治療薬としての有用性が期待される.
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