抄録
神経伝達物質やホルモンなどの様々な生理活性物質はそれぞれの受容体に特異的に結合後,細胞内でその情報がcAMPなどのセカンドメッセンジャーに変換され,それぞれの細胞・組織に特有な応答を示す.それゆえに細胞内のcAMPレベルを定量することは,細胞の応答を理解する上で非常に重要なことである.現在までにELISA,ラジオイムノアッセイ,FRETなどの様々なcAMPレベルの定量法が開発されているが,それぞれの定量法には利点と欠点があり,万能とは言い難い.そこで,新たなcAMPの定量法の開発を目的として,PKAのcAMP結合ドメインをホタルルシフェラーゼ遺伝子に組み込んだルシフェラーゼ改変体(GloSensor cAMPTM)が報告された.本稿では,この新しいcAMPセンサーを用いた定量法の実験原理と実際の細胞内cAMPレベルの定量結果を紹介し,このcAMPセンサーの特徴を既存の定量法と比較して考察する.