日本薬理学雑誌
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特集 高尿酸血症・痛風治療のブレイクスルー
腎臓尿酸輸送の分子機序:新規創薬標的としての尿酸トランスポーター
安西 尚彦
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2010 年 136 巻 6 号 p. 316-320

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抄録
ヒトおよび霊長類は進化の過程で尿酸酸化酵素(ウリカーゼ)を欠損したため,プリン代謝の最終産物は尿酸となる.高い血中尿酸値は霊長類の生存に有利に働いたと考えられるが,難溶性の尿酸の体内での蓄積は,関節内腔および尿細管内での結晶化を引き起こし,痛風特有の関節炎および腎障害の原因となる.原発性痛風の9割の患者に,腎臓での尿酸排出低下が認められるため,腎臓での尿酸代謝機序の解明は極めて重要である.尿酸は糸球体ろ過を受けた後,その9割が血中に回収される.そこでは尿細管細胞での尿酸の経上皮輸送(再吸収および分泌)が行われており,尿酸のトランスポーターが重要な役割を果たしている.最近の全ゲノム関連解析により新たな痛風発症因子として,複数のトランスポーターが報告され,注目を浴びている.腎尿細管上皮に存在する尿酸トランスポーターによる腎臓での尿酸代謝の理解が,新規尿酸降下薬創製につながることが期待される.
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© 2010 公益社団法人 日本薬理学会
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