日本薬理学雑誌
Online ISSN : 1347-8397
Print ISSN : 0015-5691
ISSN-L : 0015-5691
特集 高尿酸血症・痛風治療のブレイクスルー
高尿酸血症とメタボリックシンドローム
市田 公美
著者情報
ジャーナル フリー

2010 年 136 巻 6 号 p. 321-324

詳細
抄録

食生活の欧米化や飲酒量の増加などにより,痛風・高尿酸血症の患者数は増加している.現在,高尿酸血症は,メタボリックシンドロームと高率に合併することが報告され,いくつかの機序が提唱されている.高尿酸血症の原因の1つである尿酸排泄能の低下,すなわち尿酸クリアランス低下の原因として,高インスリン血症の関与が考えられている.インスリンはナトリウム再吸収と共役して,尿酸の再吸収促進作用を有する.したがって,インスリン抵抗性により高インスリン血症を来し,腎尿細管でインスリン作用が亢進することにより,腎尿細管でのナトリウム再吸収増加を介して,尿酸クリアランスが低下し,血清尿酸値が上昇する.また,近位尿細管において尿酸の再吸収に働くトランスポーターURAT1を介して尿酸が再吸収される際,尿酸の交換基質として分泌される乳酸等が,肥満において増加し尿酸の再吸収を亢進させる機序も想定されている.高尿酸血症のもう1つの原因である尿酸合成亢進を引き起こす機序として,過食により肝臓での脂肪合成が亢進し,NADPHが消費されることから始まる連鎖が想定されている.このNADPHの供給のためペントースリン酸経路が亢進し,その中間代謝物であるリボース-5-リン酸が増加する.それにより,プリン体のde Novo合成系が亢進し高尿酸血症をきたす.また同時に,遊離脂肪酸が増加し,肝臓でのインスリン抵抗性が惹起され,インスリンに制御されている酵素活性の低下を介し,ホスホリボシルピロリン酸の合成が亢進し,プリン体の生合成系が亢進する機序も想定されている.一方,フルクトース摂取がメタボリックシンドロームを来しやすいことは知られている.同時に,このフルクトースが肝臓で代謝される際,ATPと無機リンが消費され,無機リンを用いたATP再合成の低下をきたし,無機リンにより抑制されていたAMPディアミナーゼの活性亢進を経て,AMPの分解が亢進し,結果的に尿酸への代謝が増加する.

著者関連情報
© 2010 公益社団法人 日本薬理学会
前の記事 次の記事
feedback
Top