日本薬理学雑誌
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創薬シリーズ(5)トランスレーショナルリサーチ(24)(25)(26)
自己免疫性肺胞蛋白症に対するGM-CSF吸入治療
田澤 立之中田 光
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2011 年 138 巻 2 号 p. 64-67

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抄録

肺胞蛋白症は肺胞内にサーファクタント物質が蓄積して呼吸不全を呈する疾患である.その患者の9割は,顆粒球/マクロファージコロニー刺激因子(GM-CSF)に対する自己抗体による肺胞マクロファージの機能障害のため,肺サーファクタント物質の除去能が低下して生ずることが,最近の研究で明らかになった.この分子病態に基づく新規治療としてGM-CSFでの治療研究が進められてきた.GM-CSF吸入治療は標準治療の全肺洗浄に比べて簡便で,外来治療が可能である.本邦での多施設第II相試験で重篤な有害事象なく,60%をこえる奏効率を示し,その効果は治療期間と用量によることが示唆された.GM-CSF製剤は本邦では未承認であり,適切な対照群をおいた第III相試験は,本症が稀少疾患であるため,1国のみでは困難なことが予想される.本治療の開発・普及には,患者組織,研究者,製薬会社,国,そして国際共同研究施設が参加する新しい枠組みが必要と考えられる.

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