日本薬理学雑誌
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特集:創薬標的としてのイオンチャネル・トランスポーターの新たな研究法・探索法
トランスポーター・チャネル活性を電気生理学的に測定する自動化システム
金子 周司
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2011 年 138 巻 6 号 p. 239-243

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抄録

ある種のsolute-carrier(溶質輸送体,SLC)トランスポーターや能動輸送ポンプATPaseによる基質輸送(あるいは駆動力)としてのイオン膜透過は,電位固定法におけるイオン電流として記録することができる.しかしながら,トランスポーターが発生する電流は,一般的にイオンチャネルのそれと比べると振幅が小さく測定が容易ではない.近年,solid-supported membrane(固定化膜標本,SSM)を用いて簡便にトランスポーター電流を測定する新しい電気生理学的手法がドイツにおいて発明,開発された.我々はすでに商品化されたこのSSMベースの測定システムについて,従来の手法との比較検討を行った.本システムによって,強制発現したペプチド輸送体PepT1,興奮性アミノ酸輸送体EAAT3,シナプス小胞のプロトンポンプv-ATPase活動について,微小なイオン電流を前定常状態における容量性応答も含めて安定的に記録できた.この新しい手法は,細胞膜だけに限らず,細胞内小器官まで含めた生体膜に発現するトランスポーター・イオンチャネルの輸送機構の解明やリガンド探索に有用な手法となると考えられる.

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