日本薬理学雑誌
Online ISSN : 1347-8397
Print ISSN : 0015-5691
ISSN-L : 0015-5691
特集 慢性疼痛治療薬の研究開発戦略
温度感受性TRPチャネルを標的とした新規神経障害性疼痛治療戦略
亀井 達也宮内 政徳小山田 義博志水 勇夫
著者情報
ジャーナル フリー

2012 年 140 巻 5 号 p. 196-200

詳細
抄録

神経障害性疼痛はアンメットニーズが非常に高い難治性の慢性疼痛疾患である.いくつかの治療薬が臨床で利用されているが,その鎮痛効果は満足いくものではなく,さらにいずれの薬剤についても中枢性や心循環器系の副作用リスクが存在している.従って,このような副作用を回避し治療効果を高めた鎮痛薬を創製するため,痛みを伝える神経で選択的に機能している新規治療標的が探索されてきた.近年,有望な創薬標的として温度感受性のTRPチャネルが注目を集め,創薬研究が盛んに行われている.これらのセンサーチャネルは感覚神経終末や皮膚角質細胞等の疼痛発生部位を含む痛覚伝導路に広く分布し,病態時においては発現量の増加や機能亢進が認められ,熱・冷痛覚過敏,機械アロディニアや自発痛といった神経障害性疼痛の特徴的な症状に密接に関与することが報告されてきた.本稿では,ヒトでの検証段階に進んでいるTRPV1,TRPA1,TRPV3にフォーカスし,thermo-TRPチャネルリガンドの研究開発状況をアンタゴニスト/アゴニストに分けて紹介する.

著者関連情報
© 2012 公益社団法人 日本薬理学会
次の記事
feedback
Top