日本薬理学雑誌
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新薬紹介総説
抗悪性軟部腫瘍薬パゾパニブ塩酸塩(ヴォトリエント®錠)の薬理作用と臨床効果
新井 裕幸深澤 宣明上田 文枝
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2013 年 141 巻 1 号 p. 37-42

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抄録

パゾパニブ塩酸塩(ヴォトリエント®錠,以下,パゾパニブ)は主に血管内皮細胞増殖因子受容体(VEGFR)-1,-2,-3,血小板由来増殖因子受容体(PDGFR)-α,-βおよび幹細胞因子受容体(c-Kit)に対して阻害作用を示すマルチキナーゼ阻害薬であり,低分子の経口投与可能な化合物である.マウスおよびウサギにおける血管新生モデルを用いた非臨床試験において,パゾパニブは血管内皮細胞増殖因子(VEGF)および塩基性線維芽細胞増殖因子(bFGF)の併用による血管新生を阻害した.また,SW-872ヒト脂肪肉腫細胞株およびSYO-1ヒト滑膜肉腫細胞株を用いたマウス異種移植モデルにおいて,腫瘍増殖を抑制した.進行性悪性軟部腫瘍患者に対する臨床試験では,日本を含む国際共同第III相臨床試験がパゾパニブ単独療法の有効性および安全性についてプラセボ対照により評価することを目的として実施された.その結果,無増悪生存期間(PFS)の中央値がパゾパニブ群で4.6ヵ月,プラセボ群で1.6ヵ月(ハザード比0.31,P<0.0001)と,パゾパニブ群ではプラセボ群と比較して統計学的に有意なPFSの延長が示された.また主な有害事象は,疲労(パゾパニブ群65% vs.プラセボ群49%:以下同様),下痢(58% vs. 16%),悪心(54% vs. 28%),体重減少(48% vs. 20%),高血圧(41% vs. 7%),食欲減退(40% vs. 20%)であった.パゾパニブは本邦においてはこれらの非臨床試験および臨床試験成績に基づき,悪性軟部腫瘍の治療薬として2012年9月に承認された.

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© 2013 公益社団法人 日本薬理学会
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