日本薬理学雑誌
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創薬標的1分子の姿を捉える―静止画から動画へ―
『動的に生まれる膜受容体の機能分担』 細胞内1分子計測技術で見たheregulin受容体の2量体形成反応
佐甲 靖志
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2013 年 141 巻 5 号 p. 240-244

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抄録

細胞内蛍光1分子計測技術を用いて,heregulin(HRG)受容体(HRGR)の分子間相互作用計測を行った.HRGRはErbB familyに属するチロシンキナーゼ型膜受容体で,細胞分化の情報処理に関与している.蛍光1分子計測技術を用いると,蛍光標識したHRGと受容体の結合・解離反応を計測し,分子反応のキネティクスや分子運動のダイナミクスを定量的に知ることができる.HRGRの活性化過程においては分子の2量体化が必須であることが生化学的に示されてきたが,リガンドの結合と受容体の2量体化の関係,さらに親和性の異なるリガンド結合部位の形成機構などは,これまでよく分かっていなかった.1分子可視化計測法の応用により,このリガンド-受容体システムが分子間相互作用に従って動的に性質を変える複雑系であること,それによって,高速・高感度な情報受容が可能になっている一方で,形成された情報伝達2量体は直ちに解消されることなど,極めて動的な細胞情報処理の様相が明らかになってきた.

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