日本薬理学雑誌
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実験技術
『グルタミン酸伝達を“観る”技術』 グルタミン酸スピルオーバーの可視化解析
大久保 洋平
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2013 年 142 巻 4 号 p. 178-183

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抄録
グルタミン酸は脳における代表的な興奮性神経伝達物質である.従来からの考え方では,前シナプス終末から放出されたグルタミン酸は,シナプス間隙の中に限局して「点と点」のシナプス伝達を担うものとされてきた.しかしながら近年,グルタミン酸がシナプス間隙から漏れ出しシナプス外領域に拡散することで,非シナプス性伝達が惹起されることを示唆する知見が得られてきている.このグルタミン酸による非シナプス性伝達はグルタミン酸スピルオーバーと呼ばれる.グルタミン酸スピルオーバーは様々な脳機能と病態に関与することが示唆され,新たな創薬標的としても期待される.電気生理学的現象を必ずしも伴わず,また空間的な拡がりを示すグルタミン酸スピルオーバーを解析するためには,グルタミン酸自体を直接可視化する新たな技術が不可欠であった.筆者らは新規に開発された蛍光グルタミン酸プローブEOSを応用し,脳スライス標本および生体内の脳において,グルタミン酸スピルオーバーを高解像度に可視化することに成功した.これにより,グルタミン酸スピルオーバーが生理的入力で惹起され得ることを初めて示し,またグルタミン酸スピルオーバーの様々な側面について定量的な知見が得られた.グルタミン酸やその他の伝達物質の動態を可視化する蛍光プローブの開発,改良,応用は各地で進められており,今後のさらなる展開が期待される.
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© 2013 公益社団法人 日本薬理学会
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