日本薬理学雑誌
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総説
『がんのターゲットセラピーと創薬』 分子標的がん治療の最近の展開と創薬の可能性について
玉野井冬彦
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2014 年 143 巻 5 号 p. 236-242

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抄録
がんの基礎研究の発展により分子標的治療薬という新規の抗がん薬が開発されてきている.こうした抗がん薬はがん細胞で変化している分子標的をターゲットにしているので副作用が少ないという重要な利点がある.最近では変異B-RafをターゲットにしたVemurafenibというメラノーマに対する分子標的薬が臨床検査で活期的な効果を示している.しかしながら抗がん薬に耐性のメラノーマの出現が見られるという問題点が明らかになってきている.耐性のメカニズムはいくつかわかってきているが,その一つとして注目を浴びているのがRASの活性化である.RASが活性化されるとB-RAFでなくC-RAFを活性化するバイパスの機構が働く.それではRASを阻害することができるであろうか.今までいくつかのアプローチがとられ,最近新しいRAS阻害薬がいくつか報告されている.私たちはRASの細胞膜付加を阻害するアプローチを取っている.UCLAでGGTIという化合物をスクリーニングで同定し,現在FTIとコンビネーションでK-Ras,N-Rasの活性化を抑える方法を検討中である.また分子標的治療薬をさらに効果的にする方法として,ナノ粒子を用いてがんにターゲットすることが考えられる.これは最近のナノメディシンの分野の発展により可能になってきている.今後は抗がん薬の創薬とナノメディシンの分野は相互に影響しあうことにより,次世代のがん治療が展開してくると考えられる.
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