日本薬理学雑誌
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総説
プロスタグランジンによる神経機能の調節機構
杉本 幸彦
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2015 年 145 巻 5 号 p. 237-242

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抄録
プロスタグランジン(PG)は,細胞膜リン脂質から産生される最も代表的な脂質メディエーターであり,各PGに特異的な受容体を介して多彩な作用を発揮する.近年,受容体欠損マウスや特異的作動・遮断化合物を用いた解析からそれらの生理的意義が分子レベルで解明されてきた.とくに古くから知られるPGの神経作用,発熱や疼痛に関しては,その分子レベルでの調節機構が明らかとなった.またこうした既知作用のみならず,PGはミクログリアによる神経毒性やドパミン系を介した心理ストレスにも関与することが見いだされ,アルツハイマー病をはじめとする神経炎症の増悪因子として,さらには衝動や抑うつ応答の制御因子として注目されている.さらに最近,PG産生基質であるアラキドン酸の新たな供給経路が発見され,その責任酵素が種々の神経疾患の治療標的として脚光を浴びている.本稿では,PGによる神経機能の調節とその作用メカニズムに関する最近の知見を概説するとともに,創薬標的としての方向性を考察したい.
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© 2015 公益社団法人 日本薬理学会
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