日本薬理学雑誌
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がん患者のサポートケアを目指したトランスレーショナルリサーチの提言
新規がん悪液質モデルラットの確立および本モデルの病態生理に基づく治療薬の評価~六君子湯による悪液質改善作用のメカニズム~
寺脇 潔大宮 雄司加瀬 義夫
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2015 年 146 巻 2 号 p. 81-86

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抄録

がん悪液質は進行性がん患者の80%に発現し,筋肉組織の消耗による除脂肪量低下を伴う体重減少をきたす疾患であり,なかでも,食欲不振-悪液質症候群は,がん患者の生活の質(QOL)の著しい低下をきたす.本研究において,がん悪液質の病態生理や有益な治療薬を研究できる動物モデルの確立のために,ヒト胃がん細胞株MKN-45由来のMKN45clone85および85As2細胞株を用いて新規がん悪液質モデルラットの作製を試みた.これらの細胞株を皮下移植されたヌードラットは,体重減少,摂食量低下,筋肉量減少を伴う除脂肪量低下などの悪液質症状を呈した.85As2細胞移植ラットでは,より早期に重篤な悪液質症状を示し,臨床での診断基準を反映したことから,病態解析および有益な治療薬の評価に適したがん悪液質モデルとなる可能性が示唆された.本85As2移植悪液質モデルの病態解析により,炎症性サイトカインleukemia inhibitory factor(LIF)が悪液質誘発因子として関与している可能性が示された.本モデルでは,食欲増進ホルモンであるグレリン投与による摂食亢進作用の減弱が示され,グレリン抵抗性発現が示唆された.消化管障害や食欲不振に適応のある六君子湯は,85As2誘発がん悪液質モデルの悪液質発症後の摂食量低下を有意に改善し,体重減少を抑制し,グレリン投与への反応性低下を軽減した.また,グレリン受容体発現細胞への六君子湯添加は,グレリン刺激による細胞内シグナリングを増強した.以上,本研究において,ヒト胃がん細胞株由来85As2細胞株から,悪液質研究に有用となる新規がん悪液質モデルを確立し,本モデルに対する六君子湯の改善効果を明らかにした.六君子湯による本効果は,グレリンシグナリングの増強を介したがん悪液質モデルラットにおけるグレリン抵抗性の部分的な改善による可能性があり,臨床応用が期待される.

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