日本薬理学雑誌
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新薬紹介総説
新規C型肝炎治療薬バニプレビル(バニヘップ®カプセル150 mg)の薬理作用と臨床試験成績
木下 潔岩佐 隆史高瀨 明子中村 圭介
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2015 年 146 巻 3 号 p. 159-170

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抄録

バニプレビル(バニヘップ®カプセル150 mg)は,C型慢性肝炎治療薬として開発された大環状ペプチド構造の経口抗ウイルス薬である.本薬は,C型肝炎ウイルス(HCV)の非構造タンパク質3/4A(NS3/4A)プロテアーゼに可逆的に結合することにより,HCVタンパクのプロセッシングを阻害して抗HCV作用を発現する.レプリコン細胞株を用いたバニプレビルのin vitro阻害試験では,genotype 1aおよび1bのいずれに対してもnMレベル(EC90値)の阻害活性を示し,インターフェロンα-2b(IFN α-2b)との併用では相加作用を,リバビリン(RBV)との併用では相加から相乗作用を示した.日本人のHCV genotype 1・高ウイルス量のC型慢性肝炎感染患者を対象とした3つの第Ⅲ相臨床試験において,バニプレビル300 mg(1日2回,600 mg/日),ペグインターフェロンα-2b(PegIFN α-2b)およびRBVとの3剤併用投与により,治療終了後24週時の持続的ウイルス陰性化(SVR24)率は,初回治療例(未治療例)で84%~85%,前治療再燃例で92%~96%であり,前治療無効例でも62%に達した.また,いずれの臨床試験においても,バニプレビル・PegIFN α-2b・RBVの3剤併用投与での安全性および忍容性は概して良好であった.本薬は2014年1月に厚生労働省より優先審査品目に指定され,同年9月に「セログループ1[ジェノタイプⅠ(1a)又はⅡ(1b)]のC型慢性肝炎における血中HCV RNA量が高値の未治療患者,及びインターフェロン(IFN)を含む治療法で無効又は再燃となった患者」を対象に,PegIFN α-2bおよびRBVと併用する1日2回投与の治療薬として製造販売承認を得た.現在,C型肝炎の治療においてバニプレビル・PegIFN α-2b・RBVの3剤併用療法は,IFN-based therapyの第一選択の1つとされている.バニプレビルは,難治とされる前治療無効例においても優れた抗ウイルス効果を示しており,初回治療例や前治療再燃例を含めた治療歴にかかわらず高い有効性を示す薬剤と考えられ,C型慢性肝炎の治療に大きく貢献するものと期待される.

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