日本薬理学雑誌
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特集 国際化に対応した薬理学におけるレギュラトリーサイエンス
医薬品開発を見据えた薬理学とレギュラトリーサイエンス
塚本 桂
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2016 年 148 巻 1 号 p. 4-8

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抄録

社会は,最新の科学知見と技術を取り入れ,有効かつ安全な,未だ満たされない医療ニーズにも対応した革新的な医薬品の開発を求めているが,このような医薬品開発は開発期間の長期化とコストの増大に逼迫しており,効率化と成功確率の向上が喫緊の課題である.医薬品開発におけるレギュラトリーサイエンスは,医薬品のベネフィットとリスクを,関係するあらゆるステークホルダーが適切に判断,検証,予測するための学問である.医薬品開発過程で行われる判断の基準は,様々な要因によって変化するため,変化に遂次対応し,また,変化を予測して対応せねば,効率化と成功確率の向上は望めない.医薬品開発に関わる者が,レギュラトリーサイエンスという同じ土俵を共有することにより,異分野間の翻訳が可能となり科学的合意が形成されると考える.薬理学は,薬物治療に関連する様々な学問分野・研究領域を総合的に研究し,多角的な視野に基づいて,応用のための基盤を確立する科学である.現在の薬理学は,研究領域が細分化され高度に専門化されているが,研究成果を社会に医薬品という形で適応させるためには,総合的に有効性と安全性を評価する観点も求められる.すなわち,医薬品開発には全体を俯瞰する戦略が重要であり,そのためには薬理学者も,より実践的なレギュラトリーサイエンスを理解しておくことが有益である.この理解が深まれば,多領域を総合的に研究する共通性を有する薬理学とレギュラトリーサイエンスのシナジー効果と協働により,医薬品開発の各過程が円滑に橋渡しされ,効率的かつ確度の高い医薬品の創出が可能となるであろう.両学術分野の連携は,革新的医薬品の研究・開発を通じて,社会に大きく貢献することが期待される.

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