日本薬理学雑誌
Online ISSN : 1347-8397
Print ISSN : 0015-5691
ISSN-L : 0015-5691
特集 肺循環薬理学研究の最前線
肺高血圧症で発現変動するイオンチャネル
山村 彩
著者情報
ジャーナル フリー

2016 年 148 巻 5 号 p. 226-230

詳細
抄録

肺高血圧症とは,様々な要因により慢性的に肺動脈圧が上昇する病態の総称である.安静時の肺動脈平均圧が25 mmHg以上の場合に肺高血圧症と診断される.肺高血圧症は病態の進行に伴って肺血流量が低下し,最終的には右心不全に至る予後不良の難治性血管疾患である.肺高血圧症において,最も典型的な臨床像を示す肺動脈性肺高血圧症(PAH)の特徴は,肺動脈平滑筋の攣縮と肺血管リモデリングである.これらの病態の主な原因は,肺動脈平滑筋における細胞内Ca2+シグナルの異常な亢進である.肺動脈平滑筋の細胞質内Ca2+濃度の調節には,細胞膜上に発現するイオンチャネルが深く関与している.イオンチャネル分子の発現および活性が変化して細胞内Ca2+ホメオスタシスが破綻すると,PAHの発症や病態形成に進展する.本稿では,肺動脈平滑筋細胞に機能発現するイオンチャネルの中でも,特に細胞内Ca2+シグナル応答に密接に関連する電位依存性Ca2+チャネル,電位依存性Kチャネル,Ca2+活性化Kチャネル,transient receptor potential canonical subfamily(TRPC)チャネル,Orai/STIMチャネル,Ca2+活性化Clチャネルに注目し,PAHにおける発現変動について概説する.

著者関連情報
© 2016 公益社団法人 日本薬理学会
次の記事
feedback
Top