日本薬理学雑誌
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特集 中枢作用薬の開発効率化を目指した製薬企業各社の取り組みについて
中枢作用薬の開発効率化を目指した取り組み―ヒトでの遺伝学的および病因に関する生物学的検討に基づいた創薬研究開発―
檜杖 昌則
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2017 年 149 巻 4 号 p. 154-159

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抄録

社会的背景や現在の治療薬の状況から,精神神経疾患に対する治療薬のメディカルニーズは高いが,これらの薬剤が開発途上で中止に至る割合は,他の疾患と比較して依然として高い.開発の成功のためには,創薬標的が薬として疾患に対する正しい標的かどうか(right target),開発候補品が標的に相応する最適の分子・化合物かどうか(right molecule),臨床試験において治療対象となる患者の正しい選択がなされているかどうか(right patient)が重要となる.これらに関して,精神神経疾患では疾患の場となる脳の高次性・複雑さゆえ動物での疾患モデルを用いた検討には限界があり,ヒトでの遺伝学的解析と病因に関する生物学的検討に基づいた創薬を展開する必要がある.本稿では,ヒトでの遺伝学的解析と生物学的検討に基づいた創薬について,30年にわたるアルツハイマー型認知症に関する研究で得られた知見をもとに,創薬開発の根拠としてのアミロイドβ仮説とそれに基づく開発について述べる.さらに,パーキンソン病治療薬の例として,創薬標的の一つであるleucin-rich repeat kinase 2に関しても,ヒトでの知見とそれに基づく開発について示す.また,神経生物学的検討に基づいたトランスレーショナルリサーチとして,神経機能ドメインに着目した検討について概説する.

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