非臨床薬理試験から得られるデータの特徴は多種多様であり,またデータの解析方法の選択肢も多数存在する.したがって,試験のデータにどの解析方法を適用するのが最良かという判断に研究者のみならず,筆者のように研究者より相談を受ける統計担当者もしばしば頭を悩ませている.本稿では,探索的な位置づけで実施された2つの薬理試験の事例,およびそれぞれの事例に適用可能ないくつかの解析方法と解析結果を示した上で,解析方法選択の基本方針について考察した.その結果,検出力や前提とする分布といった統計学的な着眼点のみならず,生物学的・薬理学的な項目やその他にも多く留意が必要な点があると思われた.主要な解析を事前に1つに定めることが原則である検証的試験とは異なり,探索的試験では,計画段階で様々な解析方法を挙げ,得られたデータにそれらを適用した後,結果や方法自体について総合的に考察を加え,最も適切な解析方法を選択することが必要である.その上で検証的試験に臨むことで,試験の成功確率を最大化できる.