2017 年 150 巻 2 号 p. 88-91
新たに承認される薬の数は,開発コストあたりに換算すると過去数十年間に渡り減少し続けている.この課題の解決に向けたアプローチのひとつとして,ゼブラフィッシュを創薬に導入する機運が高まっている.ゼブラフィッシュは,ヒトへの外挿性,組織の複雑性,化合物スクリーニングの簡便性・高速性の三軸において比較的優れたバランスを持つモデル動物であり,産学官ともに創薬ツールとして利用される機会が増えている.本総説では,ゼブラフィッシュの表現型を指標とするin vivoスクリーニングを基軸とする創薬と,データベースなどを利用したin silicoスクリーニングとゼブラフィッシュの統合的利用を基軸とする創薬,という二種類のアプローチを用いた神経疾患治療薬の開発について概説する.また,ゼブラフィッシュを用いて発見された疾患治療薬が臨床に進んでいる具体例を提示する.今後,ゼブラフィッシュを用いた創薬研究の発展に伴い,ゼブラフィッシュで発見される疾患治療薬が臨床において真に有用である割合が明らかにされ,トランスレーショナルリサーチツールとしてのゼブラフィッシュの意義が確立されていくことが期待される.