日本薬理学雑誌
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特集:創薬・治療のターゲットとしての細胞分化
ミクログリアの中枢神経系発達調節機能とその創薬・治療への応用可能性
最上(重本) 由香里佐藤 薫
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2017 年 150 巻 6 号 p. 268-274

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抄録

ミクログリアは,神経や脳血管が形成される胎生初期から中枢神経系に定在する免疫担当細胞である.中枢神経系の発達過程において,ミクログリアは,貪食によってアポトーシス細胞の除去や神経細胞の余分なシナプスの刈り込みを行う.また,生理活性物質を産生することによって神経幹細胞の成長を促進し,神経細胞やグリア細胞へ分化させること,脳血管の網目構造形成を促す等,様々な役割を担っている.当研究室では,ラットの生後初期の神経細胞やグリア細胞の分化成熟および脳血管のblood brain barrier(BBB)形成において,脳内のサイトカインやケモカインの濃度が重要であり,その濃度調節をミクログリアが担っているという新知見を得ている.こうした中枢神経系の発達過程におけるミクログリアの役割を明らかにすることは,中枢神経系の発達障害を予防すること,さらにはミクログリアの関与が報告されている神経変性疾患,多発性硬化症,脳梗塞,ウイルス感染,脳腫瘍,精神疾患において,損傷した中枢神経系組織の修復や正常化に役立つ可能性が高く,新たな創薬ターゲットとしても有用である.

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