2018 年 151 巻 3 号 p. 122-129
ロミデプシン[商品名:イストダックス®点滴静注用10 mg]は,ヒストン脱アセチル化酵素(histone deacetylase:HDAC)の阻害を特徴とする新規の抗腫瘍薬である.ロミデプシンはin vitroでHDAC酵素クラスⅠを強力に阻害し,in vivoでもヒト腫瘍細胞株の異種移植モデルにおいて強い抗腫瘍効果を示した.初期臨床試験でT細胞リンパ腫に対して有効例が認められたことから,皮膚T細胞リンパ腫(cutaneous T-cell lymphoma:CTCL)患者または末梢性T細胞リンパ腫(peripheral T-cell lymphoma:PTCL)患者を対象に海外多施設第Ⅱ相試験が実施され,CTCL及びPTCLの治療薬として米国等で承認された.その後,国内第Ⅰ/Ⅱ相試験を計画し,第Ⅰ相期では,再発または難治性の日本人PTCL患者またはCTCL患者を対象に1サイクルを28日間として,ロミデプシン9または14 mg/m2を各サイクルの1,8,15日目に4時間かけて点滴静注し,忍容性を検討した結果,第Ⅱ相期の推奨用量を海外と同一用量である14 mg/m2に決定した.第Ⅱ相期では,再発または難治性の日本人PTCL患者40名を対象に,第Ⅰ相期で決定した推奨用量でロミデプシンの有効性と安全性を検討した結果,有効性の主要解析対象集団40名中17名(42.5%)に奏効が確認された.安全性解析対象集団50名における主なグレード3以上の有害事象は「リンパ球減少症」(37名,74.0%),「好中球減少症」(27名,54.0%),「白血球減少症」(23名,46.0%),「血小板減少症」(19名,38.0%)であったが,安全性プロファイルは忍容可能と考えられた.これらの結果を受け,ロミデプシンは再発または難治性のPTCLの治療薬として2017年7月に国内で承認された.