日本薬理学雑誌
Online ISSN : 1347-8397
Print ISSN : 0015-5691
ISSN-L : 0015-5691
新薬紹介総説
経口プロテアソーム阻害薬 イキサゾミブ(ニンラーロ®カプセル2.3 mg・3 mg・4 mg)の薬理学的特性及び臨床試験成績
町田 美智子福永 慎一原 隆人
著者情報
ジャーナル フリー

2018 年 151 巻 4 号 p. 166-178

詳細
抄録

イキサゾミブ(ニンラーロ®カプセル)は,Millennium社(Takeda Oncology Company)により創製された経口の低分子20Sプロテアソーム阻害薬である.ユビキチン・プロテアソーム系は,タンパク質の恒常性を保つ主要な調節系であり,細胞がタンパク質(増殖制御,細胞周期調節及びアポトーシスに関与するタンパク質など)を分解する重要な機構である.イキサゾミブは,20Sプロテアソームのβ5サブユニットに選択的かつ可逆的に結合して,そのキモトリプシン様活性を阻害することで腫瘍細胞のアポトーシスを誘導する.1~3レジメンの前治療歴を有する再発又は難治性の多発性骨髄腫患者を対象とした国際共同第Ⅲ相二重盲検比較試験(TOURMALINE-MM1試験)において,レナリドミド及びデキサメタゾンの併用群(Rd群)とイキサゾミブを上乗せした併用群(IRd群)での比較検討が行われ,主要評価項目である無増悪生存期間(PFS)の中央値は,IRd群で20.6ヵ月,Rd群で14.7ヵ月であり(ハザード比:0.742,P=0.012,層別ログランク検定),IRd群においてPFSの有意な延長が認められた(2014年10月30日データカットオフ).米国では2015年11月に,欧州では2016年11月に,「レナリドミド及びデキサメタゾンと併用し,少なくとも1つの前治療を受けた多発性骨髄腫患者の治療」の適応で承認されている.国内では「再発又は難治性の多発性骨髄腫」の効能・効果で,2017年3月に製造販売承認を取得した.今後,多発性骨髄腫治療の経口のプロテアソーム阻害薬として有用性と利便性を備えた選択肢として医療現場での貢献が期待される.

著者関連情報
© 2018 公益社団法人 日本薬理学会
前の記事
feedback
Top