日本薬理学雑誌
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新薬紹介総説
新規パーキンソン病治療薬ラサギリンメシル酸塩(アジレクト®錠)の薬理学的特徴と臨床効果
永井 将弘服部 信孝
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ジャーナル オープンアクセス

2020 年 155 巻 3 号 p. 187-194

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抄録

パーキンソン病は主に運動緩慢,振戦,強剛及び姿勢保持障害が運動症状として現れる神経変性疾患であり,病理学的特徴として黒質ドパミン作動性ニューロンの脱落による線条体ドパミン量の減少が挙げられる.パーキンソン病の治療は対症療法であるドパミン補充療法が中心となっており,モノアミン酸化酵素B(MAO-B)阻害薬を投与する治療では線条体でのドパミン代謝を阻害して脳内ドパミン濃度を増加させることによりパーキンソン病の症状を改善する.ラサギリンは強力かつ特異的なMAO-B阻害薬であり,抗パーキンソン病薬として現在,米国,欧州を含む世界50ヵ国以上で承認されている.国内で実施された臨床試験では,早期パーキンソン病患者に対するラサギリン単独療法の有効性がMovement Disorder Society-Unified Parkinson’s Disease Rating Scale Part II(日常生活で経験する運動症状の側面)及びPart III(運動症状の調査)を用いて評価され,抗パーキンソン病作用を有することが示された.さらに,レボドパ服用中の進行期パーキンソン病患者においては,ラサギリンの併用投与によりウェアリングオフ現象におけるオフ時間の短縮効果が認められている.これらの国内臨床試験の結果より,早期及び進行期パーキンソン病日本人患者に対するラサギリンの有効性が示され,2018年3月にパーキンソン病を適応症としてラサギリンメシル酸塩(アジレクト®錠)の国内製造販売が承認された.本総説では,本邦におけるラサギリン使用の理解を深めることを目的として,ラサギリンの薬理学的特徴及び国内試験結果を中心とした臨床効果について包括的に概説した.

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