日本薬理学雑誌
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特集:過敏性亢進を標的とした新しいアレルギー疾患治療戦略
マウスTh9細胞移入喘息モデルの解析からみえてきた新たな気道過敏性亢進機構
佐伯 真弓神沼 修廣井 隆親
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2020 年 155 巻 6 号 p. 375-380

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抄録

気管支喘息の病態形成には,さまざまな炎症細胞や組織構成細胞が複雑に関与している.吸入ステロイド薬の普及は,喘息を制御可能な疾病へと変えつつあるが,それでもコントロールできない難治性患者の存在は,喘息の発症および重症化に関わる新たなメカニズムの存在を示唆する.臨床的にも,各患者の病態像および分子機構の相違に基づいたフェノタイプおよびエンドタイプ分類など,疾患理解の細分化が進みつつあるが,近年,喘息の病態に重要な役割を担うと長年考えられてきたTh2細胞だけでなく,様々なT細胞サブセットがその病態形成を担うことが明らかになってきた.そこで今回,各T細胞サブセットが引き起こす喘息病態の特徴と,そのそれぞれを代表する機能分子を標的とした治療戦略の動向を整理することによって,難治性喘息に至る複雑な機構に対する理解を深めたいと考えた.中でも,最近同定されたTh9細胞は,Th2細胞と同じように好酸球浸潤と気道過敏性亢進(BHR)を伴う喘息様病態を誘導しうるが,われわれは,独自に樹立したTh9細胞依存性のマウス喘息モデルにおいて,Th2細胞が引き起こす病態とは異なり,好酸球非依存性・ステロイド抵抗性のBHRが発症することを見出した.本稿では,これを含めたわれわれの最近の研究成果と共に,その基盤となったマウス抗原特異的T細胞サブセット移入モデルの特性を活用した,新たなBHR発症機構の解明に向けたアプローチについても紹介してみたい.

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