日本薬理学雑誌
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新薬紹介総説
選択的プロスタサイクリン受容体アゴニスト セレキシパグ「ウプトラビ®錠0.2 mg/ウプトラビ®錠0.4 mg」の薬理学的特性及び臨床試験成績
桑野 敬市古杉 圭司渕上 千晶舟木 俊治
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ジャーナル オープンアクセス

2021 年 156 巻 3 号 p. 178-186

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抄録

セレキシパグ(製品名:ウプトラビ®錠0.2 mg/ウプトラビ®錠0.4 mg)は,日本新薬株式会社において創製された新規なプロスタサイクリン受容体(IP受容体)アゴニストであり,肺動脈性肺高血圧症(PAH)を効能又は効果とする.セレキシパグを経口投与すると,生体内でMRE-269に変換され,MRE-269の血漿中濃度は長時間維持される.このMRE-269が選択的なIP受容体アゴニスト作用を示し,血管弛緩作用や平滑筋細胞の増殖抑制作用を発揮する.ラット摘出肺動脈標本を用いた血管弛緩作用の検討では,MRE-269は肺葉内及び肺葉外のいずれの肺動脈を用いても高い弛緩作用を示した.また,Sugen5416/低酸素誘発肺高血圧症モデルラットにおいて,セレキシパグは肺動脈の肥厚,右心室圧の上昇,右心肥大及び生存率を改善した.PAHを対象とした第Ⅱ相臨床試験は,まず欧州で実施され,セレキシパグの良好な有効性と忍容性が確認された.日本では,37例のPAH患者を対象としたオープンラベルの第Ⅱ相臨床試験が実施され,主要評価項目である肺血管抵抗をベースラインから有意に低下させることが確認された.海外第Ⅲ相臨床試験として,本領域で最大規模のPAH患者1,156例を対象としたGRIPHON試験(Prostacyclin(PGI2)Receptor agonist In Pulmonary arterial HypertensiON)が実施され,セレキシパグは主要評価項目の「morbidity/mortalityイベントの発現までの時間」を有意に改善した.以上のように,セレキシパグはPAHの病態悪化を抑制することが臨床試験において示され,PAHの治療に貢献することが期待される.

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