2021 年 156 巻 4 号 p. 244-249
本稿では,発達神経毒性標的としての海馬神経新生を取り上げる.我々は,生後に海馬の顆粒細胞層下帯から生み出される顆粒細胞系譜と,その制御系である歯状回門に分布するGABA性介在ニューロンを定量解析することで,発達神経毒性が検出できることを見出した.特に,reelinを発現するGABA性介在ニューロンの反応性は,神経新生障害に伴う新生ニューロンの移動異常の予測に有効である.また,成熟神経の軸索末端毒性は神経前駆細胞の神経突起伸展を標的とし,発達神経毒性と成熟神経に生じる神経毒性に共通の標的メカニズムのあることを見出した.次いで,神経新生が28日間試験等の一般毒性試験の枠組みで発達神経毒性のみならず成熟神経毒性を検出するためのエンドポイントとなることも紹介する.更に,エピジェネティック毒性は神経幹細胞と介在ニューロンの両方が関与する神経新生の過程で作用し,成熟後でも破綻が続く可能性についても紹介する.