日本薬理学雑誌
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特集:基礎研究の臨床応用とアカデミア創薬への新規展開
MAPK Erk5によるユビキチンリガーゼSmurf2Thr249のリン酸化を介したTGF-βシグナル調節機構
家﨑 高志檜井 栄一
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2021 年 156 巻 5 号 p. 271-274

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抄録

椎骨,四肢骨では軟骨細胞による軟骨形成後に骨芽細胞によって骨組織に置換される内軟骨性骨化により骨組織が形成され,成長期の骨の成長は骨端の軟骨細胞の増殖と骨化のバランスにより調節される.我々は軟骨細胞成熟を調節する新規因子の探索を目的とし,Extracellular-signal-regulated kinase 5(Erk5)シグナルによる軟骨細胞分化・成熟調節メカニズムの解明を試みた.Erk5はErk1/2,JNK,p38を含むmitogen-activated protein kinase(MAPK)ファミリーに属するセリン/スレオニンキナーゼである.間葉系幹細胞特異的Erk5欠損マウス(Prx1-cre;Erk5fl/flマウス)は指の骨の劇的な屈曲,四肢の長管骨の増大,軟骨組織の過成長という表現型を示した.この結果をもとにErk5が直接リン酸化する因子の探索を行い,Erk5がE3ユビキチンリガーゼSMAD Specific E3 Ubiquitin Protein Ligase 2(Smurf2)のThr249をリン酸化することで,その機能を活性化し,標的タンパク質であるSmadタンパク質のユビキチン化を介したプロテアソーム系による分解を促進することを明らかにした.TGF-β-Smadシグナルは多くの細胞の増殖を抑制するほか細胞外マトリックスの産生などに関与している.そのためSmadの分解を制御するSmurf2Thr249のリン酸化は,様々な疾患の新規創薬標的となり得ることが想定される.本稿では,筆者らの研究を中心にSmurf2Thr249リン酸化の機能とリン酸化を調節する化合物が新規治療薬となる可能性について検討した.

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