日本薬理学雑誌
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特集:With/after コロナ時代の新たな薬理学教育I:遠隔教育の実践と課題
オンライン薬理学ロールプレイの実践と課題
中村 正帆吉川 雄朗柳田 俊彦岡村 信行谷内 一彦
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2021 年 156 巻 6 号 p. 338-344

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抄録

薬理学ロールプレイは,適切な処方や調剤を実践するために必要なコミュニケーションや職種間連携,問題対応などのコンピテンシーを習得することを目的に,学生が医療者役や患者家族役に扮して模擬診療を行う実践的演習である.この演習の主体は,模擬診療での対話であるため,これまでは対面型と親和性が高い授業であると考えられてきたが,コロナ禍に伴い実施されたオンライン型でも対面型と同等の学習効果が得られることが明らかになった.また,演者の大幅な増加や遠隔地間での開催など,空間的な制約がないオンライン授業の利点を活かした薬理学ロールプレイも実践されている.本稿ではまず,オンライン薬理学ロールプレイの実施に必要な,授業の設計や準備,実際の運用について具体的な事例を元に説明する.次に,オンライン薬理学ロールプレイが対面型と比べて優れている点について解説すると共に,オンライン型特有の問題について取り上げる.最後に,オンライン薬理学ロールプレイそのものが,あるいはそれを組み込んだ学習システムが,理解の深化や動機付けの向上だけでなく,メタ認知を促す可能性があることについて考察する.オンライン薬理学ロールプレイは,対面型の代替に留まらず,薬理学や臨床薬理学,薬物治療学教育においてコアをなす授業形態の一つとして,今後発展する可能性がある.

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