2022 年 157 巻 3 号 p. 200-206
化学物質曝露によるマウスのトランスクリプトームを多数収録した“Percellomeデータベース”を構築し,毒性分子機序解明とそれに基づく毒性予測技術開発を進めている.急性毒性についてはトランスクリプトームの類似度から同様の反応を示す化学物質をリストアップし,それらの毒性情報から毒性予測が可能となっている.反復毒性については成立機序に関わるシグナルネットワークの解析に取り組んでおり,特にトランスクリプトームとエピゲノムの解析を同時に行って,ヒストン修飾やゲノムDNAのメチル化といったエピジェネティック機構が反復毒性機序へ与える影響の解明を進めている.また解析プロセスへのAI導入による解析規模の拡大や効率向上を試みており,反復毒性試験の短期間化やビッグデータに基づくin silico予測,及び省動物化したin vivo試験の組み合わせによる毒性予測などトキシコゲノミクスの本格活用を目指している.